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  • 2011.12.13 Tuesday
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デッサン/コラージュ

















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Piano girl

道端に、ドやら、レやら、ミが散らばっている。

またか。

窓を開け放してピアノを弾くから、こうなるのだ。

ドやレをひとつひとつ拾い上げ、彼女のいる出窓へと届けにゆく。

そこではいつものように、カフェオレ色のカーテンが風に靡いている。

「リズ。ほら、落とし物」
「ああ比奈さん。こんにちは」

挨拶しながら音階を受け取るものの、リズのちいさな手にそれは収まりきらず、ぽろぽろ零れている。

「ピアノを弾く時には窓を閉めるよう言ったでしょう?
道が散らかってたよ」
「うん。でも、開けておきたかったの」

「踏まれて砕けちゃったら哀しいじゃない」
「うん、そうね。
比奈さん、珈琲飲んでいったら?」

「お言葉に甘えようかな」

リズが珈琲を好まないことは、言わずとも判っている。
それでも私が飲むと、いつでも同じものを飲みたがる。

カップの中の珈琲が減る度に、牛乳を足す。
それが彼女流の飲み方だ。

珈琲は次第に白色の度を増してゆき、終いには純然たる牛乳と化す。

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Telephone

知らない老婦人から電話が来た。

ところが、彼女は私を知っている。

私の知らない私まで、知っている。

「細かいことが好きだったでしょ。
作ってくれたペンギンや何かね、全部とってあるんだよ」

「ほんとうに可愛かったんだよ」

「体、良くないの?
でも前は色々やってたじゃない?」

「もういつ結婚してもいいわね」

あはは、まあ相手が居ればと私は言う。

「お父さんみたいなひと、善いじゃない」

ふへへへ。そうですね、と私。
そうですね。と繰り返す。

もう十五分は経過したんじゃなかろうか。

ようよう名乗ってくれたのは良いが。
矢張り、憶えがない。

「元気でね。可愛い比奈ちゃん!」

はい、どうもありがとうございます!
そちらもどうぞお元気で……

お元気で。と言い終えぬうちから、受話器の向こうでガチャンという音が不恰好に砕けて、此方の床へと散らばった。

Rain Rain Rain

その夜、私は隧道のように連なる楓の下を、ひとり歩いていたのです。

雨音だけが響く中、雨に濡れた葉の香がふと暗がりに閃きました。

楓の下を歩いてゆくと、葉にまみれた貧相な小屋が、茸の如く不気味に佇むのが見えます。

どうも飲食店のようだけれど……こんな所に?
「来たい者だけ来ればよい」と言わんばかりの、薄汚い外装。
怪しいではないか。
不審に思いつつも、手は扉に伸びました……。

そこで出されるのは、珈琲や、何とも色彩の美しい洋酒たちでありました。
薄暗いけれど、暖かみのある照明だなあ。
あまく繊細な音楽も、耳に心地好い。

店主曰く「とことん呑むための空間ではなく、悪酔いするような客も不思議と来ない」そう。
お勧めは?
オリジナルカクテル『ワカメの溜め息』。
じゃ、それで。

珈琲の匂いの染み込んだソファでは、見知った客同士、芸術や哲学を論じて飽きません。

聴いてみると、深いのだか浅いのだか判然しません。
莫迦莫迦しいけれど、何だか憎めない。
意味不明だけれど、何処か愛おしい。
海月が水中をぷりぷり漂うような会話です。

さも親しげに駄弁を振るっているものの、互いの素性など何も知らないのだそうです。

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